<<電力送電技術の点から見たエネルギーベストミックス>><<欧米の歴史研究者の声明が示唆する日本の歴史研究の未来>>

二〇一五年六月五日

<<集団的自衛権をめぐる不毛な議論を正す>>※加筆修正

安倍政権が、集団的自衛権についての憲法解釈変更の議論を始めてから、野党側による不毛な議論が盛んである。


曰く、地球の裏側に自衛隊が派遣されることになる。

曰く、他国の戦争に巻き込まれる。


本稿では、これらの、初歩的な質問に丁寧に答え、この問題についての誤解を解くことを目的に書いた。まず、地球の果てまで云々という不毛なレッテル張りの議論について、正すことにする。




/*自衛隊派遣の条件は、「日本にとって死活的に重要である」という表現が全てである。*/


安倍首相が、従来の自衛隊派遣の必要条件「日本の近郊で起きた事態である」を変更し、地理的制約を外して、自衛隊派遣の必要条件を「日本にとって死活的に重要な事態である」としようとしていることに対する反発は大きい。


しかし、まず、図1を見てほしい。


集団的自衛権をめぐる不毛な議論を正す(図1)



   図1 新旧自衛隊派遣の必要条件の関係


同図は、数学的見地から、従来の自衛隊派遣のための必要条件の集合と、新しい自衛隊派遣のための必要条件の集合の関係を表している。


同図中の上図のように、


集合Aは、従来の自衛隊派遣の必要条件の集合「日本の近郊で起きた事態である」を表している。そして、集合Bは、新しい自衛隊派遣の必要条件の集合「日本にとって重要である」を現している。


下図は、この二つの集合ABがどのように関係するか表している。

集合ABで表される領域(領域A∪B)は、以下に示す、3つの集合から構成される。

      _
)A∩B

「日本近郊で起きた事態」で「日本にとって重要でない事態」


)A∩B

「日本近郊で起きた事態」で「日本にとって重要である事態」

     _
)A∩B

「日本から遠方で起きた事態」で「日本にとって重要である事態」


日本近郊で起きる事態には、明らかに日本にとって重要である事態が含まれるので、明らかにⅱ)を構成するケースは存在する。


そして、これから本題に入るのだが、「もし、ⅰ)の領域とⅲ)の領域を構成する要素(つまり、この場合、ケース)がなければ、集合ABは同じものであり、どちらで定義しようとも二つの集合は、同じことを言っているに過ぎない」のである。


そして、「もし、ⅲ)を構成するケースが存在しないとすると、自衛隊を派遣のための必要条件の集合は、新しい定義では、ⅱ)のケースだけになってしまい、自衛隊派遣の条件が厳しくなる」のである。


だから、野党が、ⅲ)のケースは、あるのかという質問をしているが、それがもし、ないならば、新しい派遣のための必要条件で拡大する領域がないことを意味し、このとき、ⅰ)の領域を構成するケースが存在するならば、派遣要件は、かえって厳しくなることを意味するのだから、実に面白い質問をしている。


つまり、彼らは、「安倍総理は、そんなに自衛隊派遣の必要条件を厳しくしてよいのですか」と質問しているのである。実に、愉快ではないか。


この法改正を阻止するために彼らがしなければならないことは、法改正によって拡大する領域ⅲ)が実際に存在し、そして、それが、本来、認めてはならない領域であると証明することである。ところが、彼らは、領域ⅲ)が存在するかどうかで議論を挑んでいる。不思議なことである。


実際のところ、


)については、たとえ、日本近郊でおきた事態であっても、日本にとってなんら関係のない紛争に関与して自衛隊をだすのは、認められるべきではない。


)については、派遣の必要があることは、疑問の余地は、ない。


)については、例え、日本から遠く離れた地域であっても、日本にとって死活的に重要であるならば、自衛隊を派遣することは、当然である。


繰り返すが、ⅲ)が存在するかどうかは問題ではない。ⅲ)がもし、存在しなければ、新しい法改正によって、自衛隊派遣のハードルが上がるだけの話である。


では、


/*もうひとつの議論、他国の戦争に巻き込まれる論は本当か*/


を取り上げる。


日本を長期的に排除しようとする国がある場合、現状、日本の同盟国がアメリカであり、そして、良好な関係を保つ米英両国が、大海を制している現在、その国が採りうる対日政策は、以下のようなケースが考えられる。


)日本と米英を同時に攻撃する。

)日本だけを攻撃し、米英に集団的自衛権の発動を思いとどまるように抑止、または、説得する。

)先に、米英を排除し、その後、日本を攻撃する。


)、ⅱ)は、それだけで、従来の運用方針でも、直ちに日本は戦争の当事者であり、そもそも、巻き込まれではない。


)のケースでは、新しい法改正で、日本にとって重要なケースであるので、自衛隊の派遣が予想される。


この場合、日本は、戦争に巻き込まれたのであろうか?

)のケースの場合、最終的には、日本を守る後ろ盾がなくなり、そして、米英が排除されてしまった後で、対象国から、戦争を通告されても、日本には、悲惨な末路が待っているだけである。


だから、このような場合、積極的に自分のこととして、その戦争に関与すべきなのである。


だから、日本にとって重要か否かという主体的な判断条件を課しており、それを忠実に実行していれば、「日本が戦争に巻き込まれることはない」のである。


ただ、一見すると、これらのケースに当てはまらないような、「出し前の介入」もしなければ、ならない場合もあると考えられる。


しかし、その場合、その目的は、ⅱ)を阻止するためであるべきであり(つまり、日本を頼りにならない国と、他国が認識して、日本を孤立させ、日本を支援する介入を躊躇わせることを阻止するためにある程度協力しておくこと)、完全な、「ボランティア」であってはならない。そのためにも、「日本にとって重要である」という必要条件が重要な役割を果たすのである。


以上から、安倍政権が推し進めている集団的自衛権に関する法改正は、実に好ましいことであると考えられる。


最後に、予算面で厳しいとはいえ、国家は、いかなる孤立や脅威にも耐えうるだけの軍事力を持ってはじめて独立国といえるのであり、日本が、独自の軍事力の

強化を推し進めなければ、ならないことは、言うまでもない。




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wadatsumipress at 22:49│Comments(0)菊地英宏 

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